債権回収
相手先が代金を払ってくれないで、困っていませんか。
- 商品を契約どおりに納品したにもかかわらず、売掛金を支払ってくれない。
- 請負工事を完成させたのに、難癖つけて、請負代金を支払ってくれない。
- 裁判所で和解したにもかかわらず、解決金を支払ってくれない。
- 賃借りしていた倉庫を解約したが、家主が保証金を返還してくれない。
- 会社のお金を横領した従業員と示談したが、示談金を支払ってこない。
債権回収までの一般的な流れ
支払をしてこない相手方に対しては、通常、次のようなステップを踏んで回収を図ることになります。
(1)交渉
皆さんは、既に相手と支払いに関して何らかの交渉をしたけれども、言いがかりをつけて支払ってくれず困っているという状態だと思います。確かに、相手は、訴訟まではしてこないだろうと高をくくっている場合も少なくありません。こんな時は、弁護士名で請求を送り訴訟も辞さない!
姿勢を示せば、素直に支払いに応じてくる場合もあります。交渉の 際には、下請法等の各種の規制法違反を指摘することも有効です。
また、支払をしてこない何らかの理由がある場合には、後述するようにその理由に応じた対応も必要です。
尚、時効が迫っている場合は、時効完成を猶予させる目的で内容証明による督促状を送付します。督促状により、時効完成が6ヶ月間猶予されますから、この間に訴訟の準備をすることになります。このような時効が絡むケースは、弁護士に依頼すべきです。
(2) 保全
相手方の支払能力が危ぶまれる場合、仮差押え等をして、相手方の財産を保全しておく必要もあります。保全手続きにおいては、被保全債権や目的物に応じて裁判所が決定した金額(通常、請求金額の20~30%程度)を供託する必要があります。ですから、相手に支払能力があることが明らかである場合には、供託金の準備等の負担を考慮して、保全手続きを行わない選択でもでもよいでしょう。
(3) 支払督促・訴訟
交渉しても相手が支払に応じない場合には、法的手続きによらざるを得ません。法的手段というと訴訟を考えがちですが、証拠から判断してこちらの請求が正しいことが、明らかといえる場合には、まずは簡略な手段である支払督促という手続きから始めることも可能です(もっとも、相手が争えば、訴訟へ移行します。)
相手が、こちらのサービス(商品)に対してクレームをつけていて、交渉でも解決できない場合には、訴訟で白黒つけるしか方法はありません。訴訟はとても複雑ですので、是非弁護士を付けることをお勧めします。
(4) 強制執行
さて訴訟の結果、勝訴判決が確定しても、相手が任意に支払ってこない場合には、強制執行手続きをとることになります。執行対象となる財産につきましては、債権者側で特定する必要があります。この段階で、相手の財産を特定できないとすると、翻ってみて、そもそも相手の支払い能力がないケースともいえるので、売掛金の回収に時間と費用をかけるべきなのかを最初の段階で精査すべきでしょう。
このような事態を想定して、日ごろの営業活動においては、相手の資産内容に関する情報を収集しておくことが大切です。相手方の財産(預金口座、不動産、第3者への売掛金債権)が特定できる場合には、強制執行による回収が期待できます。
支払い拒否の2つのタイプ
相手が支払を拒む場合を大別すると、
- 支払能力があるのに支払わない場合
- 支払能力がないので支払えない場合
に分けることが出来ます。債権回収では、「相手方に支払い能力があるのか、ないのか。」で、大きく方針が分かれます。つまり、
- 支払能力がある場合 → 回収が期待できます。
- 支払能力がない場合 → 回収は期待できません。
ですから、支払い能力の有無の見極めが大事で、そのためには、日頃からの営業活動を通じて、相手方の与信に関する情報(メインバンクの動向、資産内容、取引先、代表者の属性等)を収集整理しておくことが鍵となります。
回収が期待できるケース
支払能力がある場合は、全力を挙げて債権回収の努力をすべきです。ところで、相手に支払能力があるにもかかわらず、支払いをしないというからには、何らかの理由があります。この理由は事案ごとに様々で、その理由に即した対応が必要となりますので、この理由を把握することが回収実現に向けて、極めて重要となってきます。
支払わない理由
この理由は大別すると3つのタイプに分けられます。
- こちらのサービスに対するクレーム
- こちらに対する嫌がらせ
- 相手が業績不振で予定通りには払えない
の3つです。それぞれのタイプについて有効な手段を考えていきます。
1、こちらのサービスに対するクレーム
有効な手段裁判が有効です。
いわゆる訴訟を視野に入れて交渉すべきです。お互いの主張が対立する現状では、交渉での解決は難しく、訴訟での決着を覚悟すべきです。
相手からのクレーム内容は、「売渡した商品に欠陥があった」、「工事の内容に不備があった」、「工事代金が打ち合わせと違っている」等様々です。これらのクレームには、言いがかり的なものもあるかもしれませんが、クレームを主張されている以上、ここは、とにもかくにも腹をくくって、こちらのサービスには何ら問題がないことを前提として、正面突破で白黒つけないと先に進みません。
2、こちらに対する嫌がらせ
有効な手段弁護士名での内容証明、支払督促、裁判が有効です。
こちらのサービスに問題がないにもかかわらず、ただ、「面倒くさい。」「ほっておけ」等こちらを軽視する一種の嫌がらせ的な対応で、支払ってこないケースがあります。下請けの場合に顕著にみられる対応です。このような場合には、あらゆる法的手段を駆使して、スピーディーに攻めていくべきです。
このケースは、相手がこちらを軽く見ている態度が根本にありますので、弁護士に依頼し、強気に出ることが効果的です。
3、相手が業績不振で予定通りに払えない
有効な手段交渉 保全手続きが有効です。
これは、次に説明する「相手に支払能力がない場合」ほどは、ひっ迫していないが、資金繰り上、今は支払えないという場合です。
この種の相手とは、とにかくよく交渉して相手の事情を把握し、相手にも頑張ってもらい、支払いできる状態になるよう協力していく姿勢も大事です。相手が交渉に応じるならば、相手が事業を継続することを前提とした回収案について合意を図っていきます。ただ、この場合でも、他の債権者が訴訟や強制執行等の手続きにでることで、相手が破産已む無しとなることも十分に考えられますので、他の債権者の動向にも要注意です。どうしても自力での回収が難しい場合には、債権回収会社への債権譲渡も選択のひとつです。もっとも、その場合、買い取り価格は簿価額よりも相当程度低い価格となってしまうことは、覚悟しなければなりません。
尚、相手に資産がある場合には、万一の場合に備えて、保全手続きをとることも選択肢のひとつではありますが、この時点での保全手続きは、同じく破産の引き金を引く結果となるおそれもあるので、慎重な検討が必要です。いずれにせよ、こちらが強硬手段をとったために、倒産に追い込まれてしまったという事態は避けるべきです。
回収が期待できないケース
残念ながら、支払い能力がない場合は回収が期待できません。ここで支払能力がない場合とは、「破産状態ないしは破産申立準備段階」のことを言います。相手がこのような状態では、結論としては何をしても無駄という可能性が極めて高いです。なぜなら、「ないものはないから払えない。」のが現実で、仮に、あなたの会社が法的手段をとったとしても、破産手続開始決定により、保全、強制執行、訴訟等の裁判手続きは、全て失効又は中断してしまい、債権回収ができなくなるからです。無駄な費用をかけずに、諦めるというのも経営者として大事な選択になります。
債権回収は顧問弁護士にお任せを
このように、債権の回収は情報戦であり、神経戦です。債権を確実に回収するためには、常に取引相手や他の債権者の動向を注視しながら、他の債権者に先駆けて、法的手段を講じていく必要があります。そのためには、日頃からの弁護士との協働は不可欠です。
もちろん、債権回収に成功するケースもあれば、失敗するケースもありますが、日頃から顧問弁護士を通じて速やかに回収を実行できるだけの体制を整えておくことで、成功の確率を高めることができます。
大切なことは、日頃より顧問弁護士と情報を共有しておくことです。できれば、トラブルに直面する前に、信頼できる顧問弁護士を見つけたいところです。
顧問弁護士をお考えであれば、まずはお気軽にご相談ください。